雨。最高気温 4℃ 最低気温 -2℃。
数年前まで(単位面積当たりの)農薬使用量世界一の国が、日本であったという話をすると皆さん驚かれます。私も以前は、「世界一は、米国あたりじゃないのかなあ」と思っていました。実際は、米国は先進国の中でも農薬使用量が少ない国のひとつです。
なぜ、日本は農薬の使用が多いのでしょう。現在、農薬使用量第1位の国は中国で、第2位は韓国、日本は第3位となっています。注目すべきは、この3国がいずれも東アジアの国であるということでしょう。3国は、いずれも温暖湿潤気候に属する国々です。暖かく、雨が多いということは、さまざまな作物が育てやすい反面、病害虫が発生しやすいということでもあります。
病害虫がたくさん発生すれば、当然それらを抑えるための農薬の使用量も増加します。
日本で農薬使用量が多いもう一つの理由は、日本の農業形態にあります。日本では、園芸型農業が盛んで、園芸型農業で育てられる作物は一般的に病害虫に侵されやすいという特徴があります。米国などでは、麦や大豆、馬鈴薯などの土地利用型の大規模畑作が盛んで、そのような農業では比較的病害虫に侵されにくいために、農薬の使用量も少なくて済むというわけです。
昔から、日本の消費者は「キレイ」な野菜を求めるといわれてきました。見た目の良さが最優先、虫食いや変色などもってのほかというわけです。これまで日本人はそのように清潔好きな一方で、農薬の使用への関心は低かったようにも思います。欧米に比べ日本で有機農業の発展が遅れているのも、このあたりに一因があるのではないでしょうか。
ただ、喜ばしいことに、近年日本でも農業に携わるさまざまな人達の努力のおかげで、年々農薬の使用量が減少していっています。人々の環境意識や健康意識の高まりもこの流れを後押ししているのでしょう。このまま農薬の使用が減っていけば、百年後には日本の農業がすべて完全無農薬でなされるようになるかもしれません。今日明日にでも農薬ゼロの農業を実現する、というは不可能です。しかし、農家がこれからも農薬を減らす努力をつづけ、消費者が意識して「無農薬」や「減農薬」の野菜を購入を少しずつ増やしてしいくようになれば、そんな未来も夢物語ではなくなるのだと思います。